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日本に蔓延する「うつ病」の正体を数字で読み解く

今日は「うつ病」がテーマです。

いまさら「うつ病とは何か?」という話をするつもりはないので、簡単に説明をすると、誰にでもなる可能性があって、気分が沈んで体調が悪くなり、日常生活を送るのが困難になるというあの心の病気です。

 

本日、「ツレがうつになりまして。」という作品を読み、映画まで見たのですが、やはりどうしてもこのような本がベストセラーになっている国というのは、「どこかおかしい」と思うわけです。

ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

 

 私も学生時代に心理学を専攻しており、多数の学会発表経験があるとともに、認定心理士という日本心理学会の発行する資格も持っております。

後にうつ病は増加傾向にあるという話をしますが、今回はうつ病を一個人の問題と捉えるのではなく、社会学的な要因があるという仮説のもと、データからその仮説を検証してみたいと思います。

 

世界中で増加するうつ病

現在、日本のみならず世界中でうつ病が進行しており、世界保健機構(WHO)も対応を呼びかけているほどです。

なお、通常の場合、精神病の定義はアメリカ精神医学会発行する「DSM精神障害の統計と診断マニュアル)」とよばれる本によって明確に条件が規定されています。

そのため、各国による独自のうつ病判断基準の結果、人数が増加傾向にあるといったことはないと仮定します。

 

また、2012年にWHOは世界のうつ病発症率マップも作成しています。

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見ておわかり頂けるように、これでも日本のうつ病発症率は低いんです。

また、意外にも高所得な国ほど発症率は低く、低所得な国の方が発症率が高いことがわかります。

 

しかし、日本人の鬱病のうち、3/4は受診していないという報告もあります。

同じ2012年にWHOは世界の自殺率マップも作成していますが、こちらでは、日本とロシアが真っ赤になっています。

つまり、「日本はうつ病患者の数は少ないけれど、自殺者数は多い」という変わった状態にあることがわかります。

(2012年の情報のため、過去にそのような状態にあったというのが適切かもしれません。)

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しかし、上記2つのグラフを見比べると、基本的にはうつ病の発症率が高い国ほど、自殺者数は少ないんです。

これは仮説ですが、アメリカ・欧州・日本のような先進国になると「うつ病」のような精神障害の既往歴があると、再就職が難しくなるため、病院に通院せずにひたすら耐えている人が多いのでしょう。

そして、いつかその耐えきることに我慢ができなくなってしまった時に自殺をしてしまう。

 

診断をされると社会的信用が落ちるから病院に受診できない→治療を飛び越えて自殺してしまうという状態です。

 

とにかく、世界は今、2005年から2015年間の10年間で、約18%もうつ病の患者数が増加傾向にあるということは確かな事実なんです。

 

日本のうつ病の現状

世界まで飛び出してしまうと話が拡散するので、一度日本のうつ病患者数を見てみましょう。

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厚生労働省の調査で、1984年(昭和59)から、2011年(平成23)までのうつ病患者数の推移です。

1999年〜2002(平成14)にかけて急増していることがわかります。

 

よく、うつ病の原因は「長時間労働によるストレス」だと言われますが、まずはこの結論が誤りだということから検証します。

下記が1980年から2012年までの平均労働時間の推移です。

30年間で、1年あたりの339時間も減少している事がわかります。

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また、日本のみならずドイツなどでも平均労働時間は減少しており、増加している国はほとんどありません。

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つまり、労働時間は減少しているのに、うつ病数は増加しているというのが日本の現状です

そして、労働時間は変化していないのに、うつ病の数は増加しているというのが世界の現状です。

労働時間による影響について完全に否定することはできないかもしれませんが、少なくとも「うつ病の主要因は労働時間ではない」ということは明らかです。

 

日本のうつ病増加は、○○が握っている!?

ここで一つのグラフを御覧ください。

これは1982年〜2012年までの日本の平均年収の推移です。

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このグラフを見てわかるように、これまで上昇していた平均年収が1998年ごろを起点として、減少しているんです。

私が提唱したいのは、うつ病の要因の一つに年収の「増加率」が関係あるのではないかということです。

 

そして、平均年収の下落に追従するように、日本の消費者物価指数も1998年頃を起点として上昇が収まってしまっています。

(この指数は日本の実質経済成長率を表しているとも言えます)

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これが何を意味するかというと、日本の経済の停滞が如実にマイナスになってしまったのは、1998年から1999年以降ということです。

 

この年収の下落と、消費者物価指数の下落がおきたタイミングは、日本のうつ病発症者数が増えたタイミングと一致するんです。

では、1998〜1999年に日本では何が起きたのでしょうか。

 

1998年を起点に変わる日本

要因①:非正規労働者の雇用拡大

日本の非正規労働者が増加したというのが大きな要因の一つです。

まずは、日本の労働環境の変化について調べてみましょう。

労働者数の推移をみると、1980年代(第2次オイルショック後)から雇用者に占める非正規雇用の比率は少しずつ増加し、1990年に初めて20%を超えた。以降は、ほぼ横這いで推移していたが、1990年代後半(アジア金融危機後)になると増加傾向が著しくなり、1999年に25%、2003年に30%、世界金融危機後の、2011年に35%を超え、2013年には過去最高の36.7%を記録している[18]。また、若年層の非正規雇用率については、学生を除いた15-24歳で32.3%、25-34歳で27.4%であり、全体と比較すると低いものの上昇傾向にある[20]。  by wikipediaより

アジア金融危機後に日本が非正規雇用を拡大していき、2013年まで猛烈な勢いで増加している事がわかります。

これが年収の低下に繋がっていることは間違いありません。

また、正規雇用を望む人でも非正規労働しか働き先がないため、安定した生活が望めないということも精神的負担になり、うつ病の増加につながっていると考えられます。

 

要因②:インターネットの普及

1998年に起きた大きな変化といえば、インターネットの個人普及率の増加です。

Windows98が誕生し、各個人の家にインターネットとコンピュータが普及していきました。

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このインターネットの普及によって、仕事は効率化され、同時に情報が急速な広がりをみせるようになります。

人とのコミュニケーションはインターネット(文字ベース)に切り替わり、仕事はコンピュータを用いて効率的であることが求められるようになります。

 

また、インターネットの急速な普及によって、mixiなどを始めとしたSNSが日本でも普及するようになります。

現在でもFacebookTwitterなどがありますが、これらのSNSうつ病を誘発させることがあるという研究結果は枚挙に暇がありません。

 以上のように、雇用形態の変化(非正規雇用の増加)によって、「たとえ正社員であっても、再就職の際には非正規雇用になってしまうのではないか。」という不安が常に付きまとうことになってしまう。

非正規雇用労働者は「いつ切られてしまうのか」という不安のもとで仕事をしなければならなくなる。

そして、年収はどんどん下がり、物価を下げざるを得ないから、企業の収益も下がり、翌年はさらに年収を下げないといけない・・・という負のループが1998年以降に襲いました。

 

1998年以降に日本のうつ病数は増加しましたが、それ以上に、日本の自殺者数は1998年以降3万人を超え続けています。 

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自殺者統計|自殺対策支援センターライフリンク

 

人間が病気も発症せずに自殺をすることは考えにくいため、実際は「隠れうつ病」が蔓延し始めたと考えるのが妥当でしょう。

そして、病院に行かない理由は、先にも述べたように診断をされると社会的信用が落ちるから病院に受診できない→治療を飛び越えて自殺してしまうであると考えられます。

 

まとめ

これまで述べた事をまとめましょう。

 

①世界のうつ病発症者数は増加傾向にある。

うつ病の経済的に豊かでない国のほうがうつ病の発症確率が高い

③日本のうつ病発症者数は少ないが、自殺者数は多い。(受診しない隠れうつが多い可能性が高い。)

うつ病の発症は、労働時間が要因ではない

⑤年収が減り、物価指数が下落するとうつ病は増加する

⑤日本の場合、経済成長が明確に止まった1998年をターニングポイントに、うつ病と自殺が増加している。

 

結論 〜僕はうつ病を「希望喪失病」と名付ける〜

筆者は冒頭で、「うつ病を一個人の問題と捉えるのではなく、社会学的な要因があるという仮説のもと、データからその仮説を検証してみたいと思います。」と述べました。

この仮説に対して、日本におけるうつ病の増加は日本の環境要因の変化に対して、人間が受動的に行った適応行動であると考えています。

 

つまり、今の日本人は効率化を求められて、インターネットで常にひと目に晒されて、会社では強いプレッシャーのもとで仕事をし、いつ非正規労働者になってしまうか、いつ会社からリストラされてしまうかといった不安を持ちながら仕事をし、それでも経済的に豊かになれないという現状に対して、「うつ病」という症状が出ていると考えるべきではないでしょうか。

 

僕はこの「うつ病」を、「希望喪失病」と名付けます。

1980年と比較して、物質的に豊かだったのは今のはずです。

しかし、うつ病も、自殺者数も多いのは今です。

人間は「今日より明日豊かになるから」という希望をもって生きていけるのであれば、年収などとは異なって前向きに生きていけるのです。

しかし、今日より明日が豊かにならない未来があり、「努力が報われないのではないか」、「今以上に環境が良くなることはないのではないか」と思ってしまうと、途端にその適応反応としてうつ病を発症してしまう可能性が高いと言えます。

 

人間にとって大切なのは、明日に希望を持って生きていけることであり、今日より明日の方が豊かになれる希望を多くの人に与えなければならないということです。

...Hope...

 

今回は身近な日本でのうつ病をテーマにしましたが、世界中で増加している背景にも同様の傾向が見て取れるはずです。

 

最後に・・・。

本当は皆、今日よりも明日のほうが豊かになるはずなんですよ。

だって、世界の名目GDPはこんなに成長しているんですから。

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こんなに成長しているはずの世界に、どうして希望を失うような人々がいるのでしょうか。

 

その原因は、きっと下記に書いたシステムのせいだと、僕は思っています。